やっぱり、まだまだだ。私は。

母の希望で、介護施設の見学に行った。


顔が映り込みそうな、真っ白な床を配したエントランス。
開放的な大きな窓が入った食堂。
居室へ続く広々とした廊下は、温かみを感じる色調の木材の設えで、まだキズひとつない。


オープンしたばかりの建物は、どこもかしこもピカピカで
その真新しさが、かえって思いを複雑にする。
まぶしすぎて、ソワソワと落ち着かないのだ。





そう、私は母を捨てようとしているのだから。
どんなに言葉を尽くそうと、私は母を捨てる場所を探しているのだ。



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あんたが苦しむと思うから...と母が言った。

だから、一緒には住めない。
だから、今の内に施設見学に連れて行ってほしい、と。



あちらの家(夫の親)に遠慮してのこと。
まだ子供に手がかかる娘に遠慮してのこと。






シルバーカーに寄りかかっても、一人では立っては居られない。
小さく痩せた後ろ姿は、実年齢より10も20も上に見える。






母にこんな事を言わせてしまう自分が、たまらなく嫌だ。






結婚することは、親を捨てることなのか。
誰もがYESと返事をしたときに、そこまでの覚悟をしているのだろうか。



過去を振り返ってみても、今更どうすることもできない。
そして
万事、丸く収まる未来を思い描こうとしても、絵筆を持った手は止まったまま。


苦しい。
苦しい。
苦しい。







そんな思いを抱えて、外出した先で目に留まった詩画展のチラシ。
星野富弘さんの詩。


よろこびが集まったよりも
悲しみが集まった方が
しあわせに近いような気がする

強いものが集まったよりも
弱いものが集まった方が
真実に近いような気がする

しあわせが集まったよりも
ふしあわせが集まった方が
愛に近いような気がする






ここまで到達するのに、
どれだけの
悲しみ
苦しみ
が必要なのだろう。





私には、まだまだ足りないのだ。
きっと




まだ、先のことはわからない。
状況も気持ちも変わっていく。

でも、今わかることが一つある。
50を過ぎた今も、私は母に守られている。
“むすめ”で居られることに安堵しているのだ。
やっぱり、まだまだだ、私は。

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だからもう遠慮はしない。

そうですねぇ~
前回より身体機能の面でチェックが増えていますが・・・

う~ん、これでは・・・
他の部分にも、
バランスよくチェックがついていれば・・・







母の介護認定結果について、自治体に問い合わせたときのこと。
明らかに、病状は進んでいるのに、現状維持判定が出たのだ。



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バランスよく
って何ですか?


何にでも基準が必要。それはわかる。
審査も
身体機能やら、認知機能やら、社会生活への適応やら・・・いろんな側面からみる。
それもわかる。



でも、バランスよくって何?
人間が衰える過程が、一律に同じ具合に進むとでも言うのか。




母は確かに、ボケてはいない。
それに比して、身体機能はどんどん悪くなっている。
アンバランスと言われれば、アンバランスだ。
だけど、それがどうした!
困っていることに変わりはない。







介護認定の救済措置。
自治体のHPには不服申し立てができるとある。
この不服という言葉が、ひっかかる。


ただ助けてほしいだけなのに
過分な要求をするつもりはないのに
それを不服という字でくくられると、あまり気分がよろしくないのは私だけなのか。




財政難で制度の運用が厳しくなってきた昨今、
介護度を下げられた人の話もよく耳にする。
現状維持ならまだいいんじゃないか
そんな中で不服(不満)をいうのは、悪いんじゃないのか。
私の負い目(遠くからしか母を支えられないこと)がそう思わせるのかもしれない。

モンスターとかクレイマーという言葉もチラつく。
周りから突出することを嫌い、空気を読むことに重きを置く日本人の悪い癖だ。
イイ人であろうとするマインドの問題か。



でも


担当者のバランスよく・・・発言で目が覚めた。



自分の心の声に耳を傾けよ!
オカシイと思ったら、声を上げよ!
自分を信じるべし!
空気なんか読むな!
イイ人なんてロクなことはない!



だからもう遠慮はしない。





そして




再認定の結果が出た。
利用できるサービスが増えたのは、有難いのだが
妥当な判断が下ったことを喜ぶべきか・・・今、複雑な思いで居る。


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母の真意は分からない。でも・・・

どうやら母の元に妹から、「言い過ぎた。ごめん。」とメールが来たらしい。
それまでの経緯は前々回の記事に書いた通り。



ズケズケはっきりモノを言うが、裏表のないところが妹の長所。
ああよかった~と思っていたら・・・母はまだ気が済まないようで、妹の欠点をあげつらう。
しばらく聞いていたが、だんだん辛くなってきた。



黙っているつもりだったが、
母が泣いていた夜、すぐに電話で妹の話を聞いたことを告げた。



でもね。
確かに今回のことは妹の方が悪いと思うけど、これまでのお互いの関わり方にも問題があったんじゃないの?
母さんも、ときどき妹の気に障ることを言ってるよ。



と、まぁ意見してしまった。
これから、また顔を合わせるわけだし
いつまでも引きずって欲しくなくて・・・との思いからだった。



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そして、今夜の電話。
当たり障りのないことを話した後に、母が言い出した。


そういえばね。
デーサービスの職員さんはどんなふうに思っているんだろうね。




今日は、新人さんが送り迎えをしてくれたらしい。
だから家の事情を詳しく知らなくて、送りの玄関先で鍵を開ける母を見守りながらこう言ったそうだ。



○○さん(母の名前)は、誰と住んでいるの?



いえ、一人です。一人が楽よ~。
と母。


それ以上、職員さんは何も言わずに帰って行ったそうだが・・・



そういえばね。
デーサービスの職員さんはどんなふうに思っているんだろうね。



この言葉をどう受け止めてよいのやらモヤモヤが続く。



母は何を言わんとしているのか?
こんな状態の母を一人にしていることは、世間様(職員さん)から見ればあり得ないことだと責められているのか?
昨日、自分の肩を持たずに意見した私に腹を立てているのか?
以前も外出先で、自分の意見を否定されるとムキになる場面があったっけ(汗)



長女でありながら、長男さんと結婚することに躊躇していたら
背中を押してくれたのは、他ならぬ母だった。
誰かがやめろと言ったら自分の意志を曲げるのか!と。
結婚するなら駆け落ちしてでもという覚悟でしなさい!
そう言われた。

あの頃は、母も若かった。まさか自分が病気になるなんて想像もしていなかっただろうし、
これほど老いて弱るとも考えていなかっただろう。
それは、私も同じ。親はいつまでも元気でいると思い込んでいた。甘かった。




母の真意は分からない。
でも・・・
一人が楽よ~という言葉に
娘に心配をかけまいとの気遣いが見え隠れするが、
この言葉を発する時、以前ほどの力はなくなった。


ああ~モヤモヤする。



考え過ぎてはダメだ。
湯船に浸かりながら、形だけでも笑顔を作って笑ってみた。
最初は口角を少し上げて、そして声を出して笑ってみた。

ハハッ。ハハハ。アハハハハハ!


続けていると、おかしくもないのに結構笑えるもんだ。
笑い続けていると、いつの間にか泣きながら笑っていた。


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叶わぬ思いを心の中で叫んでみた。


もしもし?




・・・・




もしもし? どうした?





・・わ・た・・じぶんで、き・・な・・・い・・から






母が電話口で泣いている。
まただ。妹となんかあったな。
毎晩電話していると、はいという第一声で何かがあったと分かる。
今日は、声に張りがなかった。




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母と妹は折り合いが悪い。
昔からそうだ。
高校生の頃だったか、日曜日の朝、2階自室で寝ていた私。
階下で2人の言い争う声で目が覚めた。せっかくの休日が台無しだ。
そんなことがよくあった。




妹は自分の言いたいことをポンポン言うタイプ。
本人は腹に溜め込まないから、後に尾を引かないのはいいが
結構きつい口調でまくし立てられた方は、たまったものじゃない。




母が若く、元気な頃はそれでもよかったが
年老いて、しかも病気で弱り切った心には受け止めきれない。




母の言い分を聞き
妹の言い分を聞き



どっちがどうと意見できない。




長い年月の間にできた親子の溝は、ちょっとやそっとでは埋まらない。
実家から遠く離れたところから、一方的に妹を裁くこともできない。
妹の方が圧倒的に母と関わる機会が多い。だから、遠慮もある。




妹が言う。
母さんの相手をしているとイライラする。
母さんは、自分の非を認めない。意固地だ。





わかるよ。
私もイライラすることがあるよ。
でも、それが老いるということだからしょうがない。
脳機能の衰えだから、しょうがない。
だから、たまには見ない振りをして、受け流さないと・・・





大人やなー。姉ちゃん。





とりあえず・・・

お互いイライラをぶつけあっても、良い結果は生まれない。
ストレスは体を攻撃する。
だから、私ができることを提案して、受話器を置いた。







あるブロガーさんがお母さまを亡くして
みなしごハッチになっちゃった と表現されていたが、
その一文を読んで、泣いてしまった。

母は、哀しいほどに年をとった。以前の穏やかで、芯の強い母はもうどこにもいない。




大人やなー。姉ちゃん。




全然、大人じゃないよ。私だって子どものままでいたいよー。

叶わぬ思いを心の中で叫んでみた。


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安否確認って?

母は配食サービスを利用している。
夏のある日のお弁当。

IMG_20160813_121942.jpg

食の細い母には、いろいろな味が楽しめて丁度いいみたいだ。
自治体からの補助が出ていて、うちの母の場合は1食あたり350円で週5回まで利用できる。




昨夜の電話で
今日はごはんに黄色い物が入っていたから、あらっ栗ご飯だわ♪と喜んだら
な~んだサツマイモだったガッカリと母が言っていた。
文句が言えるぐらいだったら元気だわーと安心した(^^)
だって自己負担金350円で配達までしてくれているもの。
今は野菜が高いしね~






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実母を遠距離介護している。
今やっていることを介護と言ってよいのかどうか迷うところだが、
これも介護だと自分に言い聞かせている。




ときどき実家へ出向き、母の病状を確認する。
郵便受けにたまった封書を取り出し、目を通す。
いつも公的機関に提出しなければならない書類がそのままだ。
各種認定手続きは、煩雑でお年寄りにできるものではない。
記入欄も分かりにくいし、揃えなければならない書類も多い。


歩けない母に代わり、
医師の意見書をもらうために病院へ走り、所得証明をもらうために役所へ走り
本人確認書類のコピーに走り・・・


合間にトイレットペーパーや洗剤などの日用消耗品を大量に買いに行く。
最近は歯の調子が悪いというので、無理やり頼み込んで歯医者に連れて行く。
前回刈った雑草がまた伸びているので、庭の掃除。
雑草のたくましさが毎回恨めしい!
それらを1泊2日でこなす。


足りない部分は
週2回のリハビリ目的のデイサービス
週2回の掃除、洗濯などの家事援助サービス
週5回の配食サービス
でカバーしている。



帰省は毎回慌ただしいが、
公的介護サービスのおかげで母の自立のみならず、私たちの生活が保たれている。
だからホントにありがたいと感じている。



が、ひとつだけひっかかっていることがある。
それは、配食サービスの安否確認という部分。


ほとんどの自治体で高齢者向けの配食サ―ビスが実施されている。

「栄養のバランスを考えた食事を提供し、生活支援すること」
そして
「食事を届けることで日々の安否確認ができること」
とHP上にその利点が記載されている。




たまたまお弁当が届く時間帯に居合わせたことがある。
配達の人が玄関を開けて
こんにちわ~ここへ置いときますねー。と玄関先にお弁当を置いて出て行った。




えっ?

本人の顔も見ないの?
安否確認っていったい何?
いつもありがとうございますと挨拶に出る暇もなかったわ


安否とは・・・無事かどうかということ。
確認とは・・・確かにそうだと認めること。はっきりと認めること。
だよねぇ(汗)



私が想像していたのはこういう画なのだけど・・・
251011.jpg


母のように病気で体が不自由になってくると
外に出る機会が減り、社会との接点がなくなってくる。
こういう配食サービスでいろんな人と言葉を交わすことにも意義があると思っていたのだけど。
期待しすぎなのだろうか・・・



お年寄りの話は長いし、配達件数もあって忙しいのもわかるんだけどさー。


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出会いに感謝♪ いつも応援ありがとうございます。
今日も一日いい日でありますように・・・